カワトンボの勉強

地域の自然史

私がフィールドにしている四国西南地域にはいくつかの種類のカワトンボが生息しています。撮りためた写真を整理するためにカワトンボ類の分布や見分け方などを調べたので、忘れないうちにメモしておきます。

カワトンボ科の特徴と種類

カワトンボの仲間(カワトンボ科)は河川の中流から上流の清流域に生息する中型のトンボで、全身が金属光沢に覆われている種が多い。カワトンボ科は国内に以下の4属7種が知られている。

 カワトンボ科 Calopterygidae
   アオハダトンボ属 Calopteryx
    アオハダトンボ Calopteryx japonica
    ハグロトンボ Calopteryx atrata
    ミヤマカワトンボ Calopteryx cornelia
  タイワンハグロトンボ属 Matrona
    リュウキュウハグロトンボ Matrona basilaris japonica
  カワトンボ属 Mnais
    ニホンカワトンボ Mnais costalis
    アサヒナカワトンボ Mnais pruinosa
  クロイワカワトンボ属 Psolodesmus
    クロイワカワトンボ Psolodesmus mandarinus kuroiwae

地域的分布

リュウキュウハグロトンボ(奄美大島~沖縄諸島)とクロイワカワトンボ(西表島・石垣島)の2種は南西諸島にのみ生息する。その他の地域にはアオハダトンボ属のアオハダトンボ、ハグロトンボ、ミヤマカワトンボ、カワトンボ属のニホンカワトンボ、アサヒナカワトンボの5種が分布する。

カワトンボ属の分類

カワトンボ属はオオカワトンボ、ヒガシカワトンボ、そしてニシカワトンボの3種に分けられていたが、現在ではオオカワトンボとヒガシカワトンボの大部分は統合されてニホンカワトンボとなり、ニシカワトンボはアサヒナカワトンボに変更され、2種に整理された。これらのカワトンボ属2種の翅の色にはいくつかの型があり、地域性が見られる。

四国と高知のカワトンボ類

四国にはアオハダトンボ属のハグロトンボ、ミヤマカワトンボ、カワトンボ属のニホンカワトンボ、アサヒナカワトンボが生息する。(アオハダトンボは四国にはいない) また、四国中央構造線の南側の西南日本外帯にはニホンカワトンボは分布しない。したがって四国西南地域に生息するカワトンボ属はすべてアサヒナカワトンボ(のはず)。なお、フォッサマグナ以西の地域ではニホンカワトンボは河川の上流域、アサヒナカワトンボは河川の下流域で見られる。

ということで、高知県西部(大月町)に分布する(と考えられる)カワトンボ類はハグロトンボミヤマカワトンボアサヒナカワトンボの三種。

アサヒナカワトンボの翅と偽縁紋の色彩パターンと雌雄の対応

高知県西部の大月町での観察されるアサヒナカワトンボの翅と偽縁紋の色彩の組み合わせとそれぞれの雌雄の対応は以下の通り。

◯橙色の翅・赤縁紋→すべてオスでもっとも多く見られるパターン:縄張りを持ち、メスの産卵の際に警護するタイプ
◯透明の翅・赤縁紋→オス、数は少ない:縄張りを持たない。産卵警護しない
◯透明の翅・白縁紋→メスはほとんどこの組み合わせ。一部に雄がいる。このオスは縄張りを持たない、産卵警護しないタイプと思われる。

なお手持ちの写真にはなかったが橙色翅・白縁紋型というのもいるらしい(高知県中西部地域密着ポータルサイト【満天土佐】トンボのページ参照)。

参考

・神戸のトンボ デジタルトンボ図鑑 カワトンボ科(http://www.odonata.jp/03imago/Calopterygidae/index.html)
・中国・四国のトンボ図鑑 (いかだ社)

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