アカテガニは真っ赤なハサミが特徴的なベンケイガニの仲間です。本種は陸生で海岸や川の近くの森や林に多く見られるほか、水辺から遠く離れた山の尾根近くや深い森などにも生息しています。ベンケイガニに似ていますが、甲の凹凸が弱く、縁に切れ込みがないことで見分けられます。
本種は日本に生息するカニの中でもっとも乾燥に強い種類です。カニ類はエラで呼吸しているため、水がないと生きていけません。そのため、ほとんどのカニは水辺から遠く離れることはありません。しかし、アカテガニはわずかな水をくり返し使ってエラから酸素を取り込む技を持っています。これにより水場のない乾いた場所でも生きていくことができます。
そんなアカテガニも幼生(赤ちゃん)の頃は海でないと暮らせません。そのため、アカテガニのメスは繁殖期になると腹に卵を抱えて長い旅をし、海を目指します。梅雨から初夏にかけての大潮のころ、無事に海岸にたどり着いたお母さんガニたちが波打ち際に集まって、幼生を海に放ちます。
生まれた幼生は海を漂いながら成長し、3ヶ月ほどで子ガニになり上陸します。そこから陸での暮らしがはじまります。このような生活史を持つアカテガニは森と川と海のつながりの象徴です。
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