アリタケを見つけた

地域の自然史

昨日、妻の実家の裏山を歩いていたら面白いものに出会いました。アリに寄生する子囊菌類(きのこ)である「アリタケ」です。

「アリタケ」はいわゆる「冬虫夏草」と呼ばれるものの仲間で、バッカクキン科というグループに属しています。今回見つけたものは小さな沢沿いに生えていたシロダモの葉裏に付着しており、山地性のトゲアリの仲間、チクシトゲアリに寄生していました。宿主から考えておそらくタイワンアリタケ Ophiocordyceps unilateralis という種類だと思います。

タイワンアリタケの仲間(Ophiocordyceps属)にはいくつか種類がありますが、いずれも宿主であるアリをゾンビのように操ることで知られています。体の組織を宿主の体内に張り巡らせ、筋肉や神経をコントロールするそうです。

寄生を受けたアリはあやつられるままに巣や仲間の元を離れて、菌の成長と繁殖に適した環境条件(温度や湿度、地面から距離など)の場所に移動します。いい場所にたどりつくと、宿主のアリは顎で葉の裏の葉脈にしっかりとかみつき、脚をいっぱいに広げた腹ばいのような態勢を取り動かなくなります。

アリの骸を養分にしてアリタケはさらに成長していきます。やがて菌糸がアリの体を覆うようになり、体の外まで広がっていきます。ストローマと呼ばれる細い枝のようなものがアリの頭部を突き破り伸びてきて、結実部(子嚢盤)が形成されます。 その結実部からたくさんの胞子がばらまかれ、それが別のアリに「感染」し、いのちをつないでいきます。

今回見つけたアリタケはまだ結実部ができていない若いもののようでした。寄生されたアリの体もまだきれいな状態だったのでより生々しい感じがしました。昆虫類を宿主とする寄生菌の生活や繁殖戦略は実に巧妙で本当に驚かされます。

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