海辺で暮らす人たちにとって「磯遊び」は大きな楽しみの一つです。特に春の大潮は昼間に潮がよく引くので磯遊びを楽しむにはもってこいの季節です。ここでは大月町を四国西南地域の磯の味覚の代表、あさり(ヒメアサリ)を紹介します。
この地域で磯遊びを楽しむ人たちの間で特に人気なのが「あさり」です。磯で採れる「あさり」はヒメアサリRuditapes variegatus (G. B. Sowerby II, 1852) という種で、外洋的な岩礁性海岸の潮間帯に生息するマルスダレガイの仲間です。
ヒメアサリは河口域の干潟や砂地に生息するアサリRuditapes philippinarumと近縁ですが異なる種です。アサリに比べてやや小ぶりで膨らみが弱く、薄い殻を持っています。また、殻の内側が紫や黄色を呈することが多いです。入水管先端部にある突起の形状が両種ではっきりと異なるので顕微鏡などで観察すると見分けが付きます。
私が住んでいる地域では春の大潮の時期になると近所のおんちゃん、おばちゃんたちがこぞって浜に下り、「あさり掘り」を楽しみます。沢山の人が毎日、バケツがいっぱいあさりを採っていきます。いなくなってしまわないのが不思議なくらいです。
ヒメアサリは基本的に市場には流通しないので、地域の人しか味わうことができません。なかには都会に出た娘や息子、孫などに掘ったあさりを毎年送ってあげているという人もいます。
磯のあさりは小粒ですが味がよく、味噌汁や酒蒸しなどにすると最高です。海をそのままいただいているような気がします。海辺に春が来たことを教えてくれる大切な地域の味覚です。
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